第8話

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 サトシはためらった。見透かすように綾火がいう。 「ここまできたら、同じだよ。もうサトシはファンドの人間じゃなく、大須の街っ子なんだから」  涙がその夜初めてサトシの目からこぼれた。 「すまない。おれなんかを、この街の人間だといってくれるのか。ホテルの名はファイネスト名古屋」  せなが信吾を見ていった。 「この情報どうする?」 「明日にでも警察に匿名で流せばいいんじゃないか。放火犯の情報が流れたら、すぐにな。でもさ……」  信吾はサトシの顔をじっくりと見た。 「もしサトシが自分から警察にいくなら、そっちのほうがいいな。おまえのところに警察がいくのは時間の問題だ」 「だけど、おれ放火の片棒かついでるんだぞ」 「ちょっと待って。サトシは会社からどういう指示を受けたの。正確に思いだして」  せなはさすがに頭脳派だった。 「外国人の専門家のアテンドをしてくれ。極秘の書類をわたしてくれ」 「宿泊費なんかはどういうふうになっているのかしら」 「それがどうしたんだよ。日本の現地子会社から、大須の開発費の一部として払われてるよ。よくわかんないけどフィージビ……」
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