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サトシはためらった。見透かすように綾火がいう。
「ここまできたら、同じだよ。もうサトシはファンドの人間じゃなく、大須の街っ子なんだから」
涙がその夜初めてサトシの目からこぼれた。
「すまない。おれなんかを、この街の人間だといってくれるのか。ホテルの名はファイネスト名古屋」
せなが信吾を見ていった。
「この情報どうする?」
「明日にでも警察に匿名で流せばいいんじゃないか。放火犯の情報が流れたら、すぐにな。でもさ……」
信吾はサトシの顔をじっくりと見た。
「もしサトシが自分から警察にいくなら、そっちのほうがいいな。おまえのところに警察がいくのは時間の問題だ」
「だけど、おれ放火の片棒かついでるんだぞ」
「ちょっと待って。サトシは会社からどういう指示を受けたの。正確に思いだして」
せなはさすがに頭脳派だった。
「外国人の専門家のアテンドをしてくれ。極秘の書類をわたしてくれ」
「宿泊費なんかはどういうふうになっているのかしら」
「それがどうしたんだよ。日本の現地子会社から、大須の開発費の一部として払われてるよ。よくわかんないけどフィージビ……」
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