第一章「なぜ変身ヒーローは最初から必殺技を使わないのか」

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 ん? ちょっと待って? ということは。 「もしかして、僕にそのDr.キングやクイーンとやらと戦えっていうんじゃないだろうね」 「いや、それしかねえだろ。お前には、奴らの組織、『フェアリー・ルージング』と戦ってもらう」  何言ってるの!? なんで僕がそんな正義の魔法少女みたいなことをしなくちゃいけないの!? 「いや、他の人を当たってよ。僕にはそんなの無理だ。あんな恥ずかしいコスチュームで戦うなんて。いや、コスチュームがまっとうでも無理だけど」 「そんなこと言ってもな。あのぶつかった時点でお前と俺の契約はもう結ばれちまった。今更コスチュームも含めて変更はできねえよ」  なんなのその架空請求エロサイトの「ご契約ありがとうございます」みたいな言い分。しかもあのコスチュームが変更できないって、冗談じゃない。 「いや、さっきも言ったけど、僕男なんだけど。なにあの魔法少女そのものって感じの服装」 「似合ってたぞ。お前が男だってわかるやつなんていないから大丈夫だ」  全然大丈夫じゃない。  大体、ルークは本当に日朝の魔法少女のマスコット的世界から来たのだろうか。まあ声がやたら低いイケボなのが気になるけど。見た目はたしかにそんな感じのかわいらしい小動物的なマスコットだ。しかし、もしエロ漫画的魔法少女のマスコットと同じ世界から来たのなら、僕の未来に待ち受けるのはきっと触手の苗床か悪の組織の性奴隷だ。それだけはご勘弁願いたい。宇宙のエントロピーを減少させるために、変な結界を生み出す化け物になるのも嫌だ。 「おい、どうしたんだ考え込んだりして」 「触手の苗床は嫌だ……。性奴隷にも魔女にもなりたくない……」 「いったいお前は何を言ってるんだ」   ルークが呆れた様子で言う。ちょっと黙ってて。今大事な考え事してるんだ。 「あのさ。ルーク。そのフェアリールージングっていうのは、僕が戦わないとだめなの? 他にもそのクイーンを裏切った妖精はいるんでしょ? そっちに任せとけばいいんじゃないの?」  「お前……。それでも魔法少女の自覚あんのか」  ない。 「結論から言うと、それはだめだ。俺は戦わずにビショップやローズだけに戦わせたら、俺の立場がなくなる」
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