第一章「なぜ変身ヒーローは最初から必殺技を使わないのか」

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 その後、僕はルークと共に近所の別のスーパーに向かうべく、町の中を歩く。 「ねえルーク。君みたいな変な生き物がいたら、みんなに騒がれないかな」 「騒がれるわけねえだろ。こんなキュートな外見なんだぞ」  自分で言うか。まあ見た目「だけ」はかわいいけどさ。 「冗談だ。俺の姿は普通の人間には見えねえし声も聞こえねえ。お前は俺とぶつかった拍子に波長があったのか、見えるようになってるだけだ」  よくわかんないけど、要するに見えないってことでいいのかな。 「それより気をつけろよ。無用意に外で俺としゃべると、虚空に向かって話しかけてる痛いやつみたいになるぞ」  まあそれは適当に電話してるふりでもするから大丈夫だよ。 「あ、優くん!」  背後から聞こえる聞き覚えのある声。振り返ると、そこには先ほども僕の家に押しかけて学校に来いと言ってきたクラスメイト、心春がいた。 「心春。どうしたの?」 「ちょっと買い物。優くんは?」 「僕も買い物だよ。夕飯の」 「そこのスーパー今日はもう閉店してるから気を付けて。なんか立てこもり事件があったんだって」 「あ、そうなんだ。じゃあ別の店いかないとなあ」  その事件解決したの僕だけどね。魔法少女に変身して怪人やっつけたの。  とは言うこともできないので、僕はさも今知ったかのように呟く。 「さっきも言ったけど、明日は学校に来てよね」 「いや待ってよ。ちゃんとそのうち学校行くからさ」  横でルークが「おい、どういうことだよ。お前まさか学校行ってないのか?」などとうるさいので、殴って黙らせる。 「……どうしたの。いきなり腕振り回して」 「え? ああ、うん。なんでもない。気にしないで」  これ以上変な行動を心春に見せないためにも、僕はそそくさと心春のもとを去った 「おい、なにすんだ。痛てえぞ!」  鼻先を真っ赤にしたルークが大層怒った様子で言う。 「勘弁してよ……。僕心春と話してるんだからさ」 「それは悪かったが、だからって殴ることはないだろ。……それより、どういうことだよ。学校に行ってないって」  それ聞かれたくなかったから殴ったんだけど。まあ仕方ない。 「……そのまんまの意味だよ。ここ数日、僕は学校に行ってない。それだけ」
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