門出

2/8
前へ
/33ページ
次へ
美しい金の装飾を施した馬車が次々に屋敷へと入ってゆく。馬たちの蹄鉄はタイルの上でリズミカルな音楽を奏でる。 馬車から降りた貴婦人たちは、その屋敷の大きさと美しさにほうっと溜め息を洩らした。 ギルマーティー侯爵家の屋敷では今夜、舞踏会が開かれる。今年18歳を迎え成人となるギルマーティー家の一人息子、アラステア・ギルマーティーの祝賀舞踏会である。 侯爵家の跡取り息子にお目にかかれる機会など滅多にないと貴族の娘たちは華やかに着飾り、悲鳴を上げながらウエストをこれでもかときつく締め上げた。 髪は高く結い上げ、無数の宝石と胸元の大きく開いた色とりどりのドレスに身を纏う。 ふわりと揺れるレースから漂ってくる甘ったるい香水の香りに、思わずアラステアは顔をしかめた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加