門出

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高いホールの天井には幾つものシャンデリアが輝き、ピアノの調律音に絡み合うように、透き通ったフルートの音色とバイオリンの響きが広がる。 招待客たちはそのリズムに合わてステップを踏み優雅に踊っている。 少し離れたところからアラステアに熱い視線を送るのは若い娘たちだ。 位の高い侯爵家の息子ともなれば、女性から誘うなど以ての外だったため我こそはアラステア侯の目に留まろうと必死に自らの美しさをアピールしていた。 「アラステア様、なんてお麗しいのかしら」 娘の1人が恍惚とした表情を浮かべながら言った。 アラステアはハンサムな青年だった。 絹糸のように艶やかな漆黒の髪は長く伸ばされ、後ろで一つにまとめている。 切れ長の目から覗く海の色に似た蒼い瞳は知性的な輝きをはなつ。 年の割に大人びて見えるその美しい青年に娘たちはうっとりと見惚れた。
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