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16、7歳といったところだろうか。
夫人に似て小柄で、大きな瞳と、ぽってりとした唇はりんごのように紅い。一般的には美しいと言われる顔なのだろうが、アラステアは特に魅力を感じなかった。
それよりも、豊かな胸をあからさまに強調したドレスが目のやり場に困った。
「本当にお美しいわ。どうかうちのローレンシアをお嫁に貰っていただけないものかしら」
夫人の瞳がキラリと光り、バーソロミューを見る。
バーソロミューは大きな笑い声を上げた。
「それは願ったり叶ったりですな。是非そうして頂けると嬉しい」
アラステアはぎょっとした。
えっ、こんなに簡単に婚約相手が決められてしまうのか?
焦って父を見ると、父はこっそりとウインクをした。
なんだ、冗談か。
アラステアはほっと安堵の溜め息をついた。
「その言葉、忘れませんわよ」
夫人はオホホと陽気な笑い声を上げて、では失礼、とアウゼン侯と共にダンスへと戻って行った。
「あの…またお会いできますか?」
ローレンシアはおずおずとアラステアを見上げて言った。
アラステアは少し返答に困ったあと、「またこのような機会があれば」と微笑んだ。
ローレンシアは頬を真っ赤に染め、では、と小さくお辞儀をしてから娘たちの輪へ小走りで戻りっていった。
他の娘たちから「如何でした?」「何をお話しになったの?」「羨ましいわ。私も紹介して頂戴」などと質問攻めにあっていた。
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