チョコレヰト・リグレット

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「テシガハラさん?」  答えはすぐに返って来た。テシガハラノゾミ。本のタイトルを記した文字は丸く小さいので、まあ名前からも察するに女子か。 「気になるの?」 「変な意味じゃないっすよ」  司書がニコニコと問うので誤解は解いておく。 「珍しい名字だし、本、かなり借りてるから」 「勅使河原さんはね、結構な読書家よ。家庭部だけど活動日は多くないからってよく図書室に来てくれるし。たぶん、あなたも見たことあるんじゃない?」  同じ空間にいたことはあるかもしれないが、顔を知らないから何とも言えない。  そうだ、と思い出したように司書が言う。 「番人くん、このしおり勅使河原さんに届けてくれない? 同じ学年だし、彼女家庭部で今日は部活だから調理実習室にいると思うの」 「いや、俺その子知らないですけど」 「調理実習室で司書さんからって言えば大丈夫よ。ね、頼んだわよ」  司書がどんな誤解をしたかは知らないが、そういうわけで俺と勅使河原の間に接点が生まれてしまったのだった。
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