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「……何冊か挙げることはできるけど」
「本当ですか?」
想像だにしない大声がする。目の前のおどおどした女子の声とは思えなかった。家庭部の女子たちが不審がってこちらを見ている。目立ちたくないし変な疑いをかけられたくない。
「あの、是非教えてほしいんですけど」
「いいけど、今言っていいの」
「あ、えとっ」
仮にも部活中、そして俺は早々にここを立ち去りたい。勅使河原は困ったように指を絡ませながら、ぼそりと提案する。
「その……今度、図書室でお話ししてもいいですか」
「え」
「ご迷惑だったらいいので!」
よくわからないが、この女子がなけなしの勇気を振り絞って俺に頼みごとをしているのはわかる。俺としては適当にあしらってもいいし、こいつに付き合う義理はない。
だが。
「……わかった」
精一杯のお願いを無下にするほど、俺も冷血漢ではなかった。
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