チョコレヰト・リグレット

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 そして、今日は三月十四日。俗に言うホワイトデーである。  司書による奇妙な巡り合わせから、俺と勅使河原は図書室で読んだ本について語るようになり、本の貸し借りをするようになった。会う頻度は図書室で週に一回くらい。  クラスも部活も委員会も、他の接点は何もない。廊下ですれ違って声をかけることもない。会話をするのは図書室だけ。奇妙でいて奇特な縁だった。 「あんたがチョコ? 珍しい。彼女でもできたの?」  チョコレートの作り方を教えてくれと母に頼んだら予想通り茶化された。そんなんじゃないと言っても聞き流されるから、俺は事情をすべて話す。  世話になった人がいること。その人を傷つけたこと。謝罪をして……仲を修復したいこと。 「仲直りってのは簡単なもんじゃないわよ」  織り込み済だ。そも、俺の身勝手な振る舞いで勅使河原は負わなくていい傷を負った。バレンタインデーから、俺は図書室に一度も行っていない。
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