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仲を修復することを期待すること自体、おこがましいのかもしれない。それでもいいと思った。でも、謝らずにすれ違うのはいやだとも。
俺にとって、この奇妙な縁は大きな意味を持っていたらしい。
恋じゃない。愛でもない。男とか女とか、そんな色恋沙汰でくくってほしくない。俺はただ「日常」として、勅使河原が必要だった。
「青春だねえ」
母にはからかうようにそう言われたが、最早どうでもよかった。
さて、三月十四日。修了式に向けて授業は形骸化しつつある時期。あのとき勅使河原がありったけの勇気を握りしめて教室のドアを叩いたように、俺も戦地へと赴く。
隣のクラス。入り口付近にいた女子に勅使河原はいるかと声をかける。何人かがひそひそと相談をしている。教室をざっと見たが、彼女の姿はなかった。
「のぞみなら図書室に行ったって、この子が」
決戦の場所はここに定まった。
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