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「……環くん」
「勅使河原。なんだ、用って」
勅使河原のぞみは内向的な女子だった。ショートボブの髪は前髪だけが長く、俯くばかりで目元がよく見えない。爪先は内側に向けられ、おどおどと話す。
冷やかしから逃れるべく結論を急いでいた当時の俺とは相性が最悪だった。
「あの、……この間は本、ありがとう」
「別に。お前が読みたいって言ったから貸しただけだ。大したことじゃない」
「なんだ? 二人はそーゆー仲なんですかァ?」
「隅に置けねえな、環!」
ああ、冷やかしがうざい。俺は目立たず適当に日々を過ごしたいだけなのに。
男子のちょっかいにビクビクとする勅使河原。これだと話が進まない。「気にしなくていいから」と俺は続きを急かす。
反省するならば、もし後で何か言われたとしても、ここで別の場所に移動すれば良かったのかもしれない。
「それで、お礼……」
がさ、と背中から回された手には……可愛らしいピンクの紙袋があった。
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