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教室から歓声。いくら鈍感でもわかる。今日は二月十四日。これはきっと、菓子やら何やらが入ったものに違いない。
喜ぶべきはずなのに、俺の表情は険しくなったと思う。後ろで冷やかすクラスメイトのせいだ。
「お礼と思って。私、環くんに大したことできないけど、お菓子は作るの好きだから……チョコ、なんだけど」
ありがとうと、そう言って受けとれば良かったんだ。勅使河原は家庭部に所属していてお菓子作りが趣味だと、本人から聞いていた。部員から評判の出来だ、とも聞いていた。そして、彼女には「お礼」以外の感情はなく、純粋に感謝の気持ちを込めて作ってくれたということも。
けれど俺は、それを受けとることができなかった。
「なんだ環、告白か?」
「彼女持ちかよ、裏切り者ー!」
そんな野次が飛んできて。俺は目立つのは好きじゃない。だから自分と勅使河原がからかいの的になり目立つことが……とてつもなく苛立った。
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