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勅使河原のぞみとの出会いは、半年ほど前にさかのぼる。
帰宅部の俺には特に情熱を注ぐものもなく、ただ趣味と言えるのが読書だった。放課後、図書室に行っては一冊、何かを読了する。一年通えば百冊以上の本が読める。本は新しい知識をくれるから好きだった。
さすがに毎日通えば図書委員や司書が俺の顔を覚える。だが本は一切借りないから名前をよく知らない。ついたあだ名は「番人」。図書室にいない日はないから、らしい。
「番人さん、ちょっと手伝ってくれない?」
司書が俺に本の整理を頼むのも、暗黙の了解になっていた。一冊読んでしまえばあとは帰るだけだし、読めなくても別に構わない。整理の手伝いをすると自分では気に留めなかった本と出会えることもあるので、積極的に行うことにしている。
「いいっすよ。もう読み終わったんで」
「相変わらず読むの早いね。今日は何読んでたの?」
「モンテ・クリスト伯」
司書と今日の本の話をしてから、俺はカウンター奥の書庫に向かう。委員でもないのに立ち入りが許されるのも、「番人」の特権というやつだ。
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