チョコレヰト・リグレット

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「今月の多読賞を決めるから、貸し出しカードを見てほしいの」  多読賞。図書委員が毎月お便りで行っている、図書室から借りた本の多い人間を表彰するものだ。「借りていれば君が一位なんだろうけど」と司書が言う。俺は図書室で読み終えてしまうから、貸し出しは「0冊」だ。  各学年各クラスの個人図書カードが並べられる。全校人数は千人近いから、一枚ずつ調べるなら日が暮れてしまう。 「一冊も借りてない人もいるから、借りてる人の中から各学年で一番多い人を見つけてほしいの」 「……あんまり借りてる人、いないんですね」  ざっとカードを眺めたが、ほとんどの生徒のカードはまっさらだ。  司書は少し寂しそうに言う。 「本離れが進んでる、ってことなのかしら。君みたいに記録には残らないけど読んでる人もいるから、一概には言えないけど」 「…………」  教室のホームルームまで、「朝読書」の時間に本を読んでいる人なんてたかが知れている。ブックカバーをつけて漫画を読んだり、諦めて寝ているやつもいる。この賞も本を読んでほしいと言う思惑があるのかもしれないが、現実は非情だ。
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