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「この子もいつか僕みたいな経験をするのかな」
「私みたいな女に出会ったらするんじゃない」
お互い見つめ合う。
夕日が当たる女性の顔は赤面して赤くなっているのか、夕日の光に照らされているだけなのかわからないがとても綺麗でさらに惚れ直してしまう。
「寿司の前に一仕事だ」
「あんまり子供の前で言わないで、恥ずかしい」
ますます赤くなる母親を見て子供も楽しくなり笑い出す。
三人は手を繋いで楽しそうに歩いて行く。
一時間後
仕事を終えた両親がデパートで待つ子供を迎えにきた。
「お父さん、お母さんおかえり」
二人に駆け寄り手を握り締める。
その時、ふと手を見ると父親の手に赤い何かがついていた。
「お父さん、怪我したの?」
慈愛に満ちたその表情をカメラに残したいという欲求を抑え
「これはお父さんの血じゃないから大丈夫だよ」
じゃあお母さんと思い母親の顔をじっと見つめる。
その天使のような表情を向けられ叫び出したい衝動を抑え
「私の血でもないわよ」
二人とも怪我をしていないのに父親の手に血がついている。
どんなに考えても分からず首をひねり「う~ん」と悩んでいると、父親はひょいと持ち上げ肩車をする。
「今日は大金が手に入ったから回らない寿司を食べるぞ」
「やったー!」
先ほどの疑問など何処かへ飛びさり何を食べようかなと食欲が脳を満たしていた。
父親はこっそりと手についた血をハンカチで拭った。
女性が耳元でこっそりと囁いた。
「あなたはいつも爪が甘いんだから」
「今度から爪にチョコレートでも塗っておくよ」
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