第一章 時を越えた再会

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 奥まった母の墓を背にして、月明かりに鈍く照る、様々な形の墓石の間を縫うように中ほどまで戻ったところで、巨岩を彫った慰霊碑のマリア像と四阿(あずまや)を回り込んで現れた、グロウと鉢合わせした。 「おっと――」 「こんなところで今頃何をしている」 「墓参りだよ。母さんにおやすみのあいさつをしにね」  長い柄の先端に、ランタンがぶら下がったトーチを片手に持ったグロウは、黒いロングコートをまとい、背には幅の広い諸刃(もろは)の剣を背負っている。  優に一メートルを越える長剣で、遥か昔から鍛え直しては使っているグロウの相棒だった。  いくら今は刃を潰してあるとはいえ、とてもじゃないが、不審者と間違われてあれを振り回されるのはごめんだ。 「グロウこそ、こんな時間に寒い中、見回りお疲れ様。奥に異変はなかったよ」 「そうか……最近どうにも、墓荒らしが多くてな」  白い息を吐きながら両手を振る愛真に頷き、グロウは刈り込んだ黒褐色の短い髪を革手袋をした手で掻くと、ゴツいマウンテンブーツの(きびす)を返す。  愛真も冷えきった手をポケットに突っ込み、ダッフルコートの襟に顎を埋めるようにして、二人連れ立ち墓地の門を抜ける。  鋼鉄の扉を閉めるとグロウが厳重に鍵をかけるのを待ち、しかし館には戻らず、敷地を横切る形で続く遊歩道を選んで辿り、辺りの見渡せる丘の頂上に出た。
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