1人が本棚に入れています
本棚に追加
/210ページ
十二月二十日。
普段はめったに休まないKAMIを休み、携帯電話も電源を落とし連絡を断つと、愛真はひとり教会を訪れる。
幼い頃、母と暮らした町の外れにある、今はその母が眠る場所。
古い石造りの洋館と礼拝堂に隣接した広い墓地は木々に囲まれ、手入れの行き届いた墓石が整然と並んでいる。
街を抜けた先にあるなだらかな丘を有する緑豊かな教会の敷地は広く、菜園や鶏舎、除草部隊のヤギの小屋に加え遊歩道も備え、地元の人々にも親しまれていた。
そして愛真は毎年のようにクリスマスをまたいで仕事を休み、この教会で過ごす。
端から出席日数ぎりぎりしか登校しない中学はともかく、賃金の為以上に好きだからという理由で日々ボーイとして、またピアノの弾き語りとして、勤勉に働く仕事を離れるなど常ならあり得ないことだ。
しかしこの雲隠れも、愛真にとっては欠かすことの出来ない日常の一部だった。
(母さんが亡くなってもう七年。あれから、母さんと過ごした時間と同じだけの月日が経ったんだ……長かったはずなのに、あんなに色々なことがあったのに、あっという間だった気がする)
外国人労働者の子供や身寄りのない子供を預かる教会は、この時期は何かと人手がたりないらしく、愛真の事情を知る神父様は快く無償で宿を提供してくれる。
その代わり、愛真は子供達の世話や炊事洗濯、クリスマスミサの準備や手伝いなどに忙しく追われることになる。
最初のコメントを投稿しよう!