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彼と出逢い数年に渡り共に旅をしたのは、二十世紀初頭のことだ。
その時の愛真は疫病で両親を亡くし、引き取られた親戚からも厄介払いされた十代半ばの少年だった。
今と同じように覚醒していた愛真は、膨大な知識とずば抜けた身体能力を駆使して、ひとりヨーロッパの森を渡り歩きながら暮らしていた。
その道中で、やはり人目を避けて旅をしていたグロウと出逢い、互いの境遇に通じ合うものがあり、意気投合して旅の道連れとなったのだ。
「大戦の混乱で別れて以来だけど、相変わらずみたいだね。すぐに分かったよ。見た目もやっぱりほとんど変わらない」
「俺は何度生まれ変わろうと、この型だからな。お前の魂も相変わらずだ」
額の端に傷痕のある彫りの深い顔に微笑を浮かべるグロウだが、そのまぶたは閉じたままだ。
盲目のふりをしている。ずっと昔から。その理由を愛真は知っていた。
人や物にはそれぞれ特有のオーラのようなものがあるらしく、彼はそれを識別することで日常生活を全てひとりでこなせる為、不自由はない。
「話したいことはたくさんあるけど、いつまでもここでこうしてるわけにもいかないから、後でゆっくり話そう。まずは神父様と子供達にあいさつしなきゃ」
「そうだな。アルフもちび達も待ちかねている」
乾いた冷気の吹き込む扉を閉めるとブーツを脱ぎ、頭ひとつ半も大きいグロウと肩を並べて奥へと向かった。
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