第一章 時を越えた再会

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 彼と出逢い数年に渡り共に旅をしたのは、二十世紀初頭のことだ。  その時の愛真は疫病(えきびょう)で両親を亡くし、引き取られた親戚からも厄介払(やっかいばら)いされた十代半ばの少年だった。  今と同じように覚醒していた愛真は、膨大な知識とずば抜けた身体能力を駆使して、ひとりヨーロッパの森を渡り歩きながら暮らしていた。  その道中で、やはり人目を避けて旅をしていたグロウと出逢い、互いの境遇に通じ合うものがあり、意気投合して旅の道連れとなったのだ。 「大戦の混乱で別れて以来だけど、相変わらずみたいだね。すぐに分かったよ。見た目もやっぱりほとんど変わらない」 「俺は何度生まれ変わろうと、この型だからな。お前の魂も相変わらずだ」  (ひたい)の端に傷痕のある彫りの深い顔に微笑を浮かべるグロウだが、そのまぶたは閉じたままだ。  盲目のふりをしている。ずっと昔から。その理由を愛真は知っていた。  人や物にはそれぞれ特有のオーラのようなものがあるらしく、彼はそれを識別することで日常生活を全てひとりでこなせる為、不自由はない。 「話したいことはたくさんあるけど、いつまでもここでこうしてるわけにもいかないから、後でゆっくり話そう。まずは神父様と子供(ちび)達にあいさつしなきゃ」 「そうだな。アルフもちび達も待ちかねている」  乾いた冷気の吹き込む扉を閉めるとブーツを脱ぎ、頭ひとつ半も大きいグロウと肩を並べて奥へと向かった。  
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