わたしは人魚

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「―――おぉっ?」 わたしの全身が海の中から現れると、彼は目を見開いて小さく叫んだ。 月光を受けてきらめく青い鱗。 わたしの腰から下を覆っているそれを、言葉もなく凝視する彼。 「………お前、人魚か」 彼はぽかんと口を開いてわたしを見た。 ―――あぁ、ばれてしまった。 もうだめ、わたしの人生は終わり。 さあ、切り身か見世物小屋か? 彼の考えを探るように覗き見ると、彼は、 「すごいな、本当にいるんだな……」 と物珍しそうにわたしの頭の先から足の先までを眺めている。 あぁ、これはどうやら、見世物小屋に売られることになるらしい。 覚悟を決めて、わたしは目を閉じた。 絡みつく網は、どうしたって解けそうにもない。 ………これも運命。 諦めるしかないんだわ…………。 すると。 「………ぶふっ」 不思議な音が聞こえて、わたしはそろそろと瞼を開いた。 目の前で彼が、大きな手で口許を覆っている。 その隙間から、くくく、と笑いが洩れた。 「…………?」 なぜ笑っているのだろう、わたしが首を傾げていると、彼は「ごめんごめん」と軽く手を挙げて謝ってきた。 「………いや、地曳き網にかかるなんて、間抜けな人魚もいたもんだなと」
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