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「神なき時代」というのは確かに存在する。しかしそれでも、神は神だ。
1960年代、その神棚に奉られていたのは「核」という暴力装置だった。
ww2の時代、ひとつ都市を壊滅させるにあたり膨大なキロ数の爆薬が宙空を彩った。取りもなおさず、それはつまりコストの問題に否応なく響くということ。
数十機の爆撃機が、数万キロに及ぶ爆薬を雨あられに投下するということ。燃料費、爆薬費、機体ひとつに当たるコストマネジメント。
はっきりと、それ非生産的な行為だ。飛行機ひとつ飛ばすのもタダじゃない。
けれど、「核兵器」の登場はその有り様を一変させた。ただ一つの爆撃機が、ただ一つの爆弾を落とすだけで、十万人都市が一瞬で壊滅する。
それはまさしく神の所業で、「ソドム」や「ゴモラ」も真っ青だ。そして同時に、これらは時代の「呪縛」でもある。
ただのボタンを幾つか押せば、この第三惑星が朽ち果てる。そうした絶滅装置を前線で対峙させる時代が確かに在った。しかも人類史上、類を見ない超大国同士が。
ひとつ間違えば星が滅ぶ。それでも尚、お互いの破滅の矛を付き合わせ、その発射台を睨み続ける時間の流れが在った。
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