板チョコ1枚マイナスひとかけ

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「まじキツイ、もうムリ、もう辞めてやるううう!」 真っ暗な冬空の下、マサコは足早に家路を急ぐ。 比較的大きな通りで、車の行き来はあるものの、人通りは少ない。 それをいいことに、鼻の上まで引き上げたマフラーの下で叫んだ。 最近、色々と限界を感じるようになってきた。 マサコ34歳、独身実家暮らし。 今日は、部下のミスをカバーするのに一日中走り回った。 部下のミスは自分のミスでもあると分かってるけど、ハゲ上司にネチネチと嫌味を言われて、心底うんざりしていた。 疲れきった心と身体を、癒してくれる彼氏もいない。 「あー寒い、早く帰ってご飯食べてお風呂入って寝たい……」 ほぼ無意識にそう呟いて、マサコははっとする。 ……てか、毎日それの繰り返しじゃん…… ふと、コンビニの前で立ち止まる。 通勤で、毎日駅まで歩く途中にあるコンビニだ。 「甘いもの、甘いものを摂取したい……」 普段、マサコはほとんどコンビニには行かない。 お弁当は母の手作りだし、大抵のものはスーパーの方が安いからだ。 しかし今日だけは、暗闇の中でそこだけ眩しいくらいに明るく光っているコンビニに、ふらふらと引き寄せられるように入っていった。
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