義理チョコですが

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 他の男子が「義理チョコちょうだい」とか言ってきたら、迷わずコンビニで一番安いチョコを買ってきてコンビニのビニール袋に入れたまま手渡す。百円くらいで売っているやつでもいい。  でも、流石に本命の相手にそんなことを言われると素直に返事が出来ない。今義理チョコを渡すなんていう約束を取り付けてしまったら、多分後悔することになると思う。だからといって、本命チョコをあげるような予定もなかったんだけど。 「そうだな……一万円くらいくれたらちょっといいところのチョコを買ってきてあげてもいいよ?」 「義理チョコで一万とかどれだけ太っ腹なんですか!」 「ちゃんと千円くらいするやつを買ってきてあげるから」 「太っ腹……って、よく考えるとひどい!」  からかってみると、頬を膨らませて「先輩性格悪いです!」なんて拗ねてくる。ああ……可愛いな。  私はこうやってじゃれ合うような時間が好きで、それを壊したいとはどうしても思えなかった。そりゃあ、今まで以上の関係になれたら嬉しいとは思う。一緒に街を歩いたり、遊園地とか水族館とかに行ったり、おうちでのんびりしたり……そういう、少女漫画的展開も嫌いじゃない。でも、フラれたときのリスクを考えると……やっぱり現状維持が最善の選択だと思う。  先輩、先輩って慕われているのもこの関係があってこそ。この先輩後輩っていう絶対的な関係がなければ、彼は私によりついてこなかった可能性だって考えられる。
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