第1章

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「一昨年卒業した陸上部の部長って、東大に一発合格したあの人?」 「そう。 後から考えるとあの頃先輩スランプで、記録が伸びず苛立っていたみたい。 其処に私が入部してきたから、苛立ちを私にぶっつけたみたいね」 「先生に言わなかったのかよ?」 「言ったわ。 陸上部の顧問や担任に。 でも、2人に文武両道に秀でている彼女がそんな事する訳が無い、って言われるし。 顧問には更に、彼女の指導が辛くてそんな事を言うのだろうって怒られた」 「酷い」 「両親に無理を言って冬は雪に埋もれる県から、東京のこの学校に入学させてもらっているから、辞めたいとか、転校したいなんて言えない。 生徒は皆、私が3年の先輩とその取り巻きに苛められているのを知っているから、誰も友達になってくれないし。 誰にも相談出来なくて疲れ果てて。 私が自殺したら、苛められていたことに気が付いて貰えるかな、なんて考えながら深夜、繁華街の近くにある公園でボーとしていた時、先生に声をかけられたの。 そのとき私、久しぶりに優しく声をかけられたから、思わず泣き出しちゃった。 泣き出した私を見て、先生は慌てていたけど」 「アハハハ そりゃそうだ」 「その後、イタリア料理店でご飯を奢って貰っている時、苛めの事を先生に話したの。 そうしたら先生。 まだ転任して1年目の俺ではあまり力にはなれないけど、出来るだけの事はするって言ってくれた。 翌日、校長とかに話しを持って行ってくれたのだけど、やっぱり、あの文武両道の生徒がそんな事をする訳が無いって、言われて逆に怒られたみたい。 それから直ぐだったな。 先生が授業の無い時間や放課後に、生徒の足を見るようになったのって」
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