2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
2月12日(日)7:42
ただいま。
早朝ラン行ってきた。
おかえりって声が聞けないの、寂しいもんだな。またな!
そして、昨日今日とメールがない。
ついに、諦めたのかもしれない。
リハビリルームに行くと、菜穂ちゃんがいた。
廊下ですれ違ったときに、声をかけてブログを読んだと伝えると、嬉しそうに、一緒に頑張りましょうね。と、笑い、自主トレに誘ってくれたのだった。
菜穂ちゃん以外にも、義足をつけた年配の女性が歩行訓練を、私とそんなに年が変わらなさそうな男性がエアロバイクをこいでいた。
平行棒につかまり片足立ちする私にバランスのとり方のコツを教えてくれながら、菜穂ちゃんは言った。
「あたし、幸せものです。見ず知らずの読者さんから応援コメントもらえて、こうやってブログ見たよってときどき声かけてもらえて。その度に頑張ろうって思うんです」
「最初の頃、やけっぱちになったりしなかった?」
「そりゃ、なんであたしが!?とか思ったりしましたよー」
でも、と、彼女は続ける。
「色々調べていくうちに、みんな義足を使いこなしているんだなーって。ダンサーさんとか、演目によって用途別に使い分けていて、すごいんですよ。アスリート用の斬新でオシャレな義足とかもあって、コンピュータ制御の義足とかもあるんですよー!あたし、今、ノートにデザイン画、描き溜めてるんです」
椅子に置いてあったノートには、様々なデザインの義足が描かれていた。ピンク、ハート、お花やレースをあしらった可愛いものまで。
「機能性は義肢装具士さんにダメ出しくらってるのもあるので、試行錯誤ですけど。靴だっていろんなのがあるんだから、義足だってファッショナブルなのがあったっていーじゃん!て」
いつか自分のデザインした義足のファッションショーを開催するのが夢だと語る彼女は、とても生き生きとして輝いて見える。
いい大人の自分が、一回り近くも下の女の子に励まされるのだから、情けないやら、若さのパワーに圧倒されるやらで、言葉にはできない感情で胸がいっぱいになる。
そして、そのきらきらと輝く春の息吹のような陽光が私の胸をほっこりとあたたかく照らす。
最初のコメントを投稿しよう!