ファントムペイン

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ポジティブな人のエネルギーは周囲を奮い立たせることもあるが、弱っているときに浴びるとパワーが強すぎて毒になることもある。 けれど、自分と同じような、いや、それ以上に大変であったろう菜穂ちゃんの、その前向きなパワーは、 (あぁ、翔くんに会いたいな。 教えてくれたブログの娘と会ったよって、伝えたいな) 純粋に、私にそう思わせた。 そんな風に思っても、後の祭りだろうか。 「あ!」 菜穂ちゃんが小さく声をあげたので振り返ると、ドアを開けて入ってきたのは翔くんだった。 菜穂ちゃんがペコリと翔くんにお辞儀をして、 「私の初めてのお客様なんです」 そう言って私に向かって悪戯っぽい笑みを浮かべた。 「お客様......?」 状況がよく呑み込めずにいると、菜穂ちゃんが先ほどの義足デザインノートの一番最後のページをめくって、翔くんと私に差し出した。 「翔さんから、美沙さんとの結婚式用の義足をデザインして欲しいって、ブログに問い合わせがあったんです」 白のレース調の義足のワンポイントに、赤、黄色、ピンク、ブルーなどのカラフルなジェムストーンが散りばめられたデザインだ。 「可愛い!」 デザイン画を覗き込んだ私は、思わずため息をこぼした。 こんなに可愛くて華やかで温かみのあるオシャレな義足を見るのは初めてだった。 「翔さんの美沙さんのイメージからデザインしてみたんですよ」 「え?」 驚いて翔くんを見上げると、翔くんは照れくさそうに頭をかいた。 「喜怒哀楽はっきりしてて、オモチャ箱みたいな女だって言っただけだよ」 「なに、それ!」 翔くんの腕を叩こうとして、片足の重心がうまく取れずによろける私を翔くんが抱きとめた。 そのまま、ぎゅっと抱きしめられる。 「さよなら、なんて言うなよ」 「ちょっとぉ、翔さん、そういうことはここじゃないところでやってくれますー?」 菜穂ちゃんが茶目っ気たっぷりの表情で私たちをひやかす。 「あ、ごめんね!えっと、松葉杖は.......」 私は慌てて翔くんから離れようとするが、翔くんはそのまま、私の脇に手を滑らせ、お姫様だっこしてしまった。 「ちょ、翔くん!!病院で恥ずかしいよ!」 「だって、こっちのが早いだろ」 「ごちそうさまでーす」
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