ふうせんのしぼむ期間

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あるとき彼女が引っ越した。僕に対する不意打ちだと思った。 けれどそれは、彼女自身に対しても不意打ちだった。何かが彼女をうながした。 彼女は環境を変えないと、空気の突っ張ったふうせんが知らない間に突如しぼんで地面に落下するように、彼女はまだとべないツバメみたいにいつも何か萎縮していた。 僕のせいでないことはわかっていた。 けれども、僕では何もできないこともわかっていた。 彼女の引っ越しは、僕にはそれほど辛いものではなかった。引っ越しても彼女はきっと僕を必要とする。 結婚相談所はまだある。 僕の会員期間はとうに過ぎたのだろう。更新をうながす通知もなくなった。 真っ黄色の首輪をした猫を僕は想像した。
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