再会

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月曜日に、あのカステラを買おうと思った。1切ずつのバラ売りがあったらうれしいと思いつつ。 専用駐車場はクルマが3台駐めるスペースがあった。思った通りの小さな洋菓子屋だった。 けれど相当にびっくりしたのは、店内に響くハードコアのノイズと店主だ。 君は。 火曜日のフードコートの彼女だ! あ。いらっしゃいましたね。 うれしいです。お菓子を喜んでもらえると。 よかった。 カステラは、1本売りしかしていませんか? 大丈夫です。1切から販売しています。特に割高でもありません。 古来よりある洋菓子を作ってみたくて。カステラを販売しようときめたのは、あなたが美味しそうに食べてくれたから。もっとも、端はカステラのなかで1番美味しいですよね(笑) むかしからあるお菓子は難しい。何故なら、不便な時代に作られたものだから、シンプルで、ある意味勘もはたらかせないといけなかったり、いまある便利な器具に頼れないデリケートな作業が必要になるんです。 今日は成功しても明日は失敗するかも知れない。仕上がりがそんな不安定なうちは商品にならなくて。 カステラは期間限定です。他のケーキの予約注文がないときに。 ごめんなさいね、(ハードコアが)うるさくって。月曜日は正直いってしまうと店内メンテナンスにもってこいの日。こういう音楽ちょうどよくって。モチベーションが上がって。 いや、僕全然キライじゃないです、この音。 カステラ、美味しくて驚きました。 大きいナと思ったけれど、すぅーっとフワっと口のなかで溶けて行ったよ。 それはよかった。 彼女の店で僕はマドレーヌとフィナンシェとカステラを購入した。 火水木が休業でも大丈夫なように。 ありがとうございました。 では明日、、といおうと思ったがやめた。フードコートで僕達はお互いただのオブジェみたいだから。
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