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そのとき娘は夢を見た。
ひとりの老人が現れて娘に声をかけた。
「こら、娘、そこの娘」
「はい」
娘は答えた。
「おい、娘、返事をしなさい」
娘は答えているのだが老人には聞こえていないのか、
「はい、なんですか」
老人は娘の傍らにきた。盲ているのか目をつぶり、長く白い髭を生やし白い衣服をまとっている。
「おい、こら、娘。そこの娘じゃよ。わしのいうのが聞こえないのか」
老人は怒ってしまった。
「聞こえています。さきほどから聞こえております」
すると老人は顔をしかめ長い袖から両の手を出して娘の顔に触れた。娘の髪毛に触ると、「うむ」
と頷き、
「ここだな」
という。
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