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冬の訪れを知らせるかのように冷たい風が吹き荒ぶ12月。 太陽が雲に隠れ、余計に寒さの増した今日は、不運にもマラソン大会が開催される事になっていた。 普段なら制服に身を包み登校するのだが、今日は学校指定のジャージに身を包み、愛用のリュックを背負って伊賀巧(いがたくみ)は家を出た。 ──わざわざ冬にマラソン大会なんてしなくてもいいのにな…。 白く漏れ出た溜め息を隠すようにマフラーを鼻まで引っ張り上げ、学校へ向けて自転車を漕ぎ出す。 住宅街を抜け桟橋を渡ると、あまり綺麗とは言い難い川沿いの土手を通過する。 マラソン大会のルートでもあるこの道は、練習でも幾度も通った走りなれた道だ。 ──あれ? 飽きる程に見慣れた風景の中で、一点の違和感を感じ、巧は自転車を止め辺りを見渡した。 犬の散歩をするおばさん。 子供の送迎をするお母さん。 登校中の学生。 眼前に広がるのは、やはりいつもの見慣れた風景だ。 ──気のせいか…。 何故かもやもやと残る違和感に小首を傾げながら、巧は再び自転車を漕ぎ出した。
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