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1章
凛とはあの日、3か月ぶりに大学で再会したが、久しぶりに見た彼女はまるで別人だった。
3か月前まではいかにも大学生という感じのフレッシュな服装をよく着ていたが、あの日の彼女はパーカーを着て、フードを深々と被っていた。変わっていたというよりも何かがあったことを思わせる様子だった。
初めは他人の空似かと思ったから声は掛けなかったが、横を通り過ぎる際に彼女の右手の甲に広がっている特徴的な火傷の跡を見つけ、すぐに彼女だと確信した。
「凛か?」
声をかけると、彼女は小さく肩を震わせて立ち止った。
「凛・・・だよな?」
彼女はゆっくりと振り向く。彼女がこちらを向いたとき、俺はぎょっとなった。
彼女の左目には眼帯がかけられ、右頬やコメカミあたりに青あざができていた。さらに左手にも煙草を押し付けられたかのような小さな火傷の跡がぽつぽつとあった。
見ているこっちが痛々しくなるほどの、ひどい怪我の数々だった。
彼女のトレードマークである茶色のウェーブのかかった長い髪も、不自然に短く切られていた。
彼女は怯えた風にこちらを見ている。
「・・・どうしたんだ?その怪我」
「な、なんでもない!転んだだけだから!」
そういって彼女は逃げるようにその場を立ち去って行った。
彼女は転んだといっていたが、転んだだけにしてはあざが多いし、左手の根性焼きのような火傷跡の説明がつかない。
それに彼女の様子があまりにもおかしい。3か月前まで彼氏ができたと幸せいっぱいだった彼女とは到底思えなかった。
普段から幸せの塊のような凛。
俺の幼馴染であり、初恋の人でもある。そんな彼女に何があったのか。
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