6人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女の身に何が起きたのかを知ったのは翌日のことだった。
サークルのメンバーで昼食をとっていたときのことだ。
「凛、最近学校来てないよね」
凛の友達の沙耶が唐突にそう言った。
「そう言えば全然見てないね。あたし火曜日の授業一緒だけど前期の最初以来ずっと見てないし」
「単位大丈夫かな?結構やばいんじゃない?」
他の女子も心配そうに言った。凛の奴、学校自体来ていなかったのか。
「でも俺、昨日凛に会ったぞ」
俺のその言葉に、凛と同じ研究室の萌香が反応した。
「それ、ほんとに昨日?どこで会ったの?」
「旧校舎の前あたりで。本館の方に向かってったな」
俺が何気なくそういうと、萌香は少し俯いて、食事の手を緩めた。
「そう・・・来たんだ、彼女・・・」
そうつぶやいて、萌香はまたパンに口をつけた。
昼食後、いつものように喫煙所に行こうとしたとき、おもむろに手を引っ張られた。
振り向くと、思いつめた表情で携帯を握りしめた萌香がいた。
「凛のことで話があるの。一緒に来て」
そう言って萌香は俺をサークルセンターの方へ連れていった。
「・・・凛、学校やめるかもしれない」
サークルセンター裏の駐輪場で唐突に萌香は言った。
「そんな・・・どうして急に?」
そう聞くと、萌香は携帯に指を走らせ、メールの履歴を見せた。
「彼氏にそう言われたからだって・・・」
萌香から携帯を受け取り、画面に視線を落とす。
そこには「死にたい」、「こわい」、「助けて」という言葉が乱立していた。
全部凛が送ったものだ。どれも底抜けに明るい彼女が言ったとは思えない言葉だった。
「昨日学校来たのは退学届を出すためだと思う・・・」
萌香はそう言うと俯いた。
「・・・彼氏に言われたって言ったよな」
俺がそう聞くと萌香はこくりと頷いた。
「付き合って一か月ぐらいからだと思う。凛が私に相談してきたの。・・・彼氏から暴力を受けているって」
萌香の言葉に頭が真っ白になった。
最初のコメントを投稿しよう!