毒、ときどき蜜

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気落ちして、俯きながらアイスコーヒーをストローですすっていると、またもや、ぷっと噴き出す声が聞こえた。 ちらりと目をあげると、案の定、尚がおかしそうに肩を揺らしている。 「……なに、なんで笑ってるの?」 「あははっ、だって、下向くとすんごい二重あごになってるから」 「な……っ」 反射的にあごに手をやると、ふよっ、と柔らかな肉の感触。 うわ、まじであご肉やばい。 慌てて顔をあげ、なかったことにする。 がーんとショックを受けている私に、彼は「見本のような二重あごだな」と追い打ちをかけた。 「……なんてこと言うの! 普通に傷つくんですけど!」 じとりと睨みつけると、尚は「え、言わないほうがよかった?」ときょとんとした顔になる。 「二重あごになってるって気づかずに生きてくほうが嫌じゃない?」 「……そりゃそうだけど、言い方とか、言う場所とか、色々あるじゃん」 「別にいつ言ってもどこで言ってもどんな言い方しても梨央が二重あごだという事実に変わりは」 「あーもう、うるっさい、もういい!」 尚の言葉を遮るように言うと、彼は「はいはい」と肩をすくめた。 私たちのテーブルに沈黙が訪れる。 無言のまま、私はコーヒーをすすった。
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