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私は項垂れていた。
「はあ~……もう……誰かいないかな……」
午後4時近くの人通りの殆ど無い公園のベンチで、学校帰りの姿のまま、私は下げた頭から垂れる前髪から手元へと視線を向ける。
そこには今日、本来なら今頃ウキウキでイチャついている予定だった彼氏への贈り物……バレンタインのチョコレートが入った小さめの紙袋が通学鞄と一緒に置いてあった。
「悪い、お前とは終わりにしたいんだ」
そう言って悪びれる様も見せず、彼氏はヘラヘラと笑っていた。
別れる理由を聞く私に、「だって、お前マグロじゃん。つまんねぇんだもん」
稲妻が走って落ちた──
「ふざけんなよっ!マグロって何だ?!別れる理由がそれか?!私らは夫婦かよ!性の不一致か?!ヤりたい盛りのついたオス猫が!お前のテクが無いだけだろ!固いだけの素チンが、ゴム人形でも抱いてろっつーのっ!!」
思い出すと腹が立ち、思わず立ち上がって女子高生らしからぬ言葉を叫んでしまった。
辺りを見回すと、犬の散歩をするおっさんや保育園帰りの親子連れが遠巻きに呆れた視線を投げ掛けてくる。
ママさんは子供の耳を塞ぎ、足早に公園を後にし、子供はブランコを指差して嘆いていた……。
私は肩で息を吐き、態とらしく制服を叩いて着いてもいない埃を払ってベンチへと座り直した。
友達もチョコを片手に彼氏の元へと走って行った。
今日は誰もが「連絡しないでね♪」とイチャつく宣言をしていたのだ。
「あ~あ……どっかにイケメン落ちてないかなぁ……このチョコどうしよう」
元彼にあげるはずの物を横流しする相手もおらず、かと言って振られた相手を罵りながら食べる気も起こらない。
空を仰いで溜め息を吐き出して『途方に暮れる』様を見せていた、その時、
「ソノチョコレート、クレナイ?」
と突然声を掛けられた。
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