第1章

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あれから母は私に煩く小言を言うことが無くなった。 それはそれで何だか放り出されたようで物足りない気がしないでもない。 今まで反発心を抱きながらも、母の言葉は私の道標になっていた。 遅く帰っても小言もないし、休みの日に新しい服を着ておまけに化粧までして帰ってきたのに怒るどころか 「夕貴可愛すぎるよ。 整形してないよね?」 なんて言いながらマジマジ見てくる。 「この前お化粧してもらったショップの店長に、皆でしてもらったんだ。 この服はそこで買ったの。貯めてたお小遣い大分減っちゃった。」 「モデルさんみたいだわ。そのうちスカウトされたりしてね。」 なんて笑う。今までの母なら小言のオンパレードだったから、覚悟して帰ってきたのに拍子抜けだ。 「母さん、怒らないの?」 「なんで怒るの?小遣いで買ったんでしょ?休みの日に化粧したって先生だって怒らないでしょ?」 「うん。」
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