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別れを決めた日、変装なしで駅までコートを持ってきてくれて人前で抱きしめてくれた。
最後は私から気持ちを断ち切るように彼の背中を押した。
高村くん今でも好き、大好き…
「何が悲しいの?」
「えっ?」
「悲しい顔だよ。目も潤んでる。今にも溢れそうだ。彼とは上手くいってないの?」
「別れました。」
「そうか、ごめんね。悲しい思い出だった?」
「いいえ、大丈夫です。何時でも彼の活躍を見ることは出来ますから。」
嘘じゃないけど、嘘かもしれない。
彼の広告や雑誌を見ると私も頑張らなくちゃって思えるけれど、彼がどんどん遠くなって行くようで寂しい気持ちが胸をキューっと締め付ける。
「ふーん、彼は有名人?」
「え、まあ。」
「誰?」
「内緒です。」
「そ、言いたくなかったら言わなくていいよ。その彼と楽しかったことはあった?」
「はい、ペアルックで映画を見に行ったり、一緒に買い物したり…凄く楽しかったです。」
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