第1章

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別れを決めた日、変装なしで駅までコートを持ってきてくれて人前で抱きしめてくれた。 最後は私から気持ちを断ち切るように彼の背中を押した。 高村くん今でも好き、大好き… 「何が悲しいの?」 「えっ?」 「悲しい顔だよ。目も潤んでる。今にも溢れそうだ。彼とは上手くいってないの?」 「別れました。」 「そうか、ごめんね。悲しい思い出だった?」 「いいえ、大丈夫です。何時でも彼の活躍を見ることは出来ますから。」 嘘じゃないけど、嘘かもしれない。 彼の広告や雑誌を見ると私も頑張らなくちゃって思えるけれど、彼がどんどん遠くなって行くようで寂しい気持ちが胸をキューっと締め付ける。 「ふーん、彼は有名人?」 「え、まあ。」 「誰?」 「内緒です。」 「そ、言いたくなかったら言わなくていいよ。その彼と楽しかったことはあった?」 「はい、ペアルックで映画を見に行ったり、一緒に買い物したり…凄く楽しかったです。」
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