第1章

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「この前夕貴が化粧して帰ってきた後、父さんに言われたの。」 「父さん何て?」 「夕貴は大丈夫だよって。 それよりこれからは二人の生活を大事にしようなって。」 「ふーん。」 「子育て卒業して、休みの日は二人で旅行したりデートしたりしようだって。」 流石父さんだ。 いつも私を温かい目で見守ってくれていて、余計なことは言わない。 心配だろうに遅くても父に何か言われたことはない。「お帰り」と温かい言葉が返ってくるだけ。 信頼されている気がして、父だけは裏切られないって思う。 母が煩く言うのをなにも言わないで聞いていた父。 そんな母も父が意見を言うときは口答えしないで聞き入れる。 めったに無いから重みがあるようだ。 嬉しそうに話す母。彼女は父に甘やかされながら、家で家事と子育てだけに生きていた。 そんな母にも楽しみができたんだ。 考えてみると母はフラフラ外に出掛けていくタイプじゃない。 真面目に家庭を守ってきた。 だからこそ一人娘を過剰に見守ってきた。小言が多かったのもそのせいだ。
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