無邪気な子供たち

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「じゃあ、直人、桃子さん、お願いしますね。」 「はい、行ってらっしゃい。」 友人の結婚式に出席するという直人の兄夫婦。 兄の秋人さんはともかく…妻の敦子さんは相変わらず無愛想だ。 義弟とその彼女に子供達を預けるというのに 桃子とまともに目も合わせようともしない。 こんな態度もあって、桃子は少しイライラしていた。 友人の結婚式なら子連れじゃ駄目なのかな…と思ったが これでは式を台無しにしてしまいかねない。 「こら、はやと!やめなさい!」 直人の静止する声なんて耳に入らない様子で 隼人は公園の遊具を独り占めしていた。 1回転しそうな勢いでブランコを思い切り漕ぐ隼人 止める間もなく他のブランコの上には濡れた土を乗せ、他の子供達が乗れないようにしていた。 日曜日の午後 公園には他にも親子連れが沢山いる。 「乗りたい」とブランコを指差し、泣きそうな顔の子供達 母親同士はヒソヒソと何かを言い合い、時折チラチラとこちらを見てくる。 考えるまでもない、隼人の躾がなっていないと非難したいのだろう。 預かった限り保護者は私達になるんだろうけど この子の躾がなっていないのは、私のせいじゃない。 桃子はため息をつきながら、隣に座って砂に絵を描き続ける妹の千咲に話しかけた。 「ちーちゃんは、すべり台とかで遊ばないの?」 相変わらず返答はない。 桃子の顔を見ようともせず、何も聞こえないかのように砂に絵を描き続けている 母親の敦子さんにそっくりな顔をして。 桃子は千咲を刺激しないよう、それ以上話しかけることを諦めた。 5歳になる双子の兄妹、隼人と千咲 乱暴で我儘な兄の隼人は近所でも有名な問題児なんだそう。 妹の千咲は、極度の人見知りで隼人と違いとてもおとなしかったが 一度癇癪を起こすと手がつけられないほど泣き叫ぶ。 そんな子供たちに対して、両親である秋人さんと敦子さんは叱ることもなく 諦めたようにも感じられるほど無関心に思えた。 この子たちが叔父の直人にはとてもなついていたことから、頻繁に一緒に世話を任されるようになった桃子だったが もしも直人と結婚したら、今以上に密に付き合わなければならないんだろうか… 桃子はそう遠くない未来を想像し、一層深いため息をついていた。
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