無邪気な子供たち

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病院に着くと そこには真っ青な顔で眠る隼人と 笑顔を浮かべた敦子さんがいた。 桃子は状況がわからなかった。 急変したと聞かされていた隼人はぐったりして見えるが 敦子さんの顔は安堵しているように見える。 これでも回復したってことなの? そもそもインフルエンザの急変て何…? 「桃子ちゃん…」 後ろから肩を叩かれ、桃子はぎくりとした。 そこには秋人が立っていた。 「ごめんね、わざわざ来てもらって」 …女と腕を組んで歩いてたくせに、白々しい… 桃子は軽蔑した目で秋人を見ていたが 隼人の容体の急変は嘘ではなかったようだ。 インフルエンザの発熱から、血圧が一気に下がり 一時は心停止寸前だったそうだ。 原因については未だ不明で医者が調べている途中だが、今は安定しているそうだ。 「お母さん、もう大丈夫ですよ。簡易ベッドを用意させますから、お母さんも少し休んで下さい」 看護師が敦子に声をかけている。 「敦子、大丈夫か?任せきりでごめんな」 そう言う秋人の顔を見つめる敦子は 今まで見たことがないほど穏やかに微笑んでいた。 「じゃあ…私はこれで帰りますね。朝8時に出るので、千咲ちゃんのお迎え、お願いします」 そう言って帰ろうとした時 「桃子さん」 敦子に呼び止められた。 「ありがとう」 そう言って微笑む敦子の顔に 何故か言いしれぬ不気味さを感じていた。
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