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加奈子は幸次郎の申し出を受け入れた。
「なっ!何故そんな馬鹿な事を!」
加奈子の周りの人達は、それは日本人が携帯電話を持っている確率と同じ位の確率で、加奈子に開口一番その様な言葉を口にした。
しかしそんな事は加奈子にだって充分過ぎる程解っている。
加奈子は頭がいい。そしてどちらかというと用心深い方だ。
決して希望的観測はしないし、何時だって最悪な状況を心に思い描く事も忘れない。
加奈子は刑務所の窓口で書類を受け取ると、何はともあれ先ずはその「あすなろ園」に足を運ぶ事にした。
その孤児院はゴミの焼却場や火葬場等が近くに有る山間の寂しい不便な場所に建っていた。
JR大久保駅の窓口で駅員にその孤児院の場所を尋ねると、近くにバス停はなく、残念ながらタクシーを使うしか無いという愛想のない返答が帰ってきた。
加奈子は仕方なく駅前のロータリーでタクシーに乗り込んむと運転手に場所を告げた。
場所を告げると運転手は、一瞬振り返り「ほう」と云う表情を見せてタクシーを走らせ始める。
運転手のその表情から推測すると、どうやら此処から目的地までは相当の距離がある様だ。
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