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バス停でバスを待って居ると雨が降って来た。
夏の夕立の様に雨脚は酷くないが、その代わり当分上がりそうも無い予感を含んでいる。
雨に濡れたアスファルトから立ち上ぼる匂いは夏のままで、何処にもまだ秋の気配は無いというのに、雨の振り方だけはもう夏のそれでは無くなって来ている。
小時(しばらく)するとバス停にバスが来て、加奈子はそのローステップバスに乗り込んだ。
加奈子は通路側にひとつ空席を見つけて腰を下ろしたが、三歳位の女の子の手を引きながら最後に乗り込んで来た大きなお腹を抱えた妊婦さんに席を譲ってあげた。
「私は妊娠する事も無く、出産する事も無く、あの日突然母親になったんだ。」
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