5人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう一度言ってみろ!」
いうや否や、皓の見事な直突きが充の鳩尾(みぞおち)に決まった。
上背のある皓が、しなやかに腕を使ってくりだすパンチには、十歳の子供とは思えない迫力がある。
顔を狙わなかったのはせめてもの慈悲だ。
「やめてよ、皓」
半泣きになった洵が、皓の腕にぶら下がって、ようやく次の一発を思いとどまらせた。
「今度やったらただじゃすまないからな」
そう皓がすごむと、充は真っ青な顔をして一目散に逃げて行った。
「高等小学校はお前ひとりで行くんだぞ」
「うん。分かってる」
洵は俯いたまま答えた。
泥だらけになった洵の教科書を拾ってやりながら、皓はため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!