旅立ち

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「あなたたち二人を足して割ればちょうどいいのに」  母はよくそう言って笑った。儚(はかな)げな洵を十歳で家から出すのはためらわれたから、両親はもうしばらく、手元で育てることにしたのだった。高等小学校であと四年間学ばせて、どこぞの名の通った商家にでも奉公させようと考えたのである。
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