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「そっちはどうなんだ?本田」
「なんかさ、すっげー忙しいの」
「そうなのか?」
「先々月あたりから死因がよくわからない仏さんが何体か出てるんだよ」
「そんなに? いつもそんなんだったか?」
「何言ってんの。異常だよ、異常!」
「そんなこと言って、年がら年中今年は当たり年だって言ってるんじゃないのか?」
「さあねぇ。昨日なんて脳みそ丸ごと持ってかれた死体が出たんだぜ。スパッと頭をかち割って、そりゃもうプロ並み」
「なんだそれ。異常者の仕業か? 医療知識のあるやつか」
「どうだろうねぇ」
本田は忙しそうではあったが、なんだか常に楽しそうだ。基本的にはノリの軽いやつだから仕方ないが、現場で不謹慎な事にならなければいいがと、霜月は時々心配した。
「俺、行かなきゃ。シモさん、なんかいいネタあったら俺にくれよ」
「お前もな!」
本田は手を振って去っていった。こういうネットワークというのも現場サイドでは重要な働きをしているものだ。
霜月が本田のおかげで少しだけ気が紛れたと缶コーヒーを一口すすった瞬間、胸ポケットのスマホが震えた。
「そうか、同窓会午後六時半からだった。忘れるところだったな」
設定しておいたスマホのリマインダー機能が、飲み会の予定を知らせていたのだった。
霜月は午後の業務説明会のタイムスケジュールを思い起こした。
「ちょっとだけ遅れそうだな」
缶コーヒーを飲みながら、そう呟いた。どうせ各関係機関から質問責めに合うのは目に見えている。全部に丁寧に回答していれば時間が伸びるのは仕方のないことだろう。
「植本に今から少し遅れると連絡を入れておくか」
霜月はスマホを操作してメールを送信した。
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