新たな関係

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食事の間、真樹からの熱い視線を浴びていた。 家族の食事の席には、前会長夫妻、会長夫妻、坂本社長夫妻と娘・菜穂、菜月と坂本社長秘書の山本さんも居た。 真樹の向かいに座っていて、何だか食事が喉を通らない。 隣の菜月が、「章兄とはうまくいっているみたいね」と、こっそり話してきた。 キスの事を想い出して、思わず赤面する。 『章介、式の日取りは半年後で良いな』 会長がそう一言発すると、「問題ありません」と章介は、食事の手を止め答えた。 『花南も大丈夫だな?』 真樹が、公然と“花南”と呼んだ。 名前をいきなり呼ばれた驚きと、結婚式の日取りまで、今日決められてしまうのかという複雑な気持ちがあった。 答えに困る。 会長の命令とは言え・・・真樹のことは好きなのは変わらないが、彼と想いが通じ合っているという感じはしない。 どちらかと言うと、“身体”と“欲望”が真樹からは強く感じる。 『どうした?あのことは話していないなら・・・』 『会長、それについては、折を見て私から話します』 真樹と会長の話に、何かあるのか? 真樹さんが、私に話していない事があるのだろうか? 『お話しが何か分かりませんが、それを話していただくまでは、結婚式を挙げたいとは思いません』 花南は、思い切って切り出した。 会長は、考え込んだが怒らずに、「花嫁の気持ちが大事だ。君の事を考えもせずに話しを勧めて済まなかった」と謝ってきた。 『父さんは、先走りやすいからな』 孝一は、自分たちの事を思い出したのか、笑いながら言った。 『花南さん、私も相談に乗るし、菜月さんもいるから大丈夫よ』 坂本社長夫人のみちるが、柔らかい笑顔で言った。 少し気持ちが落ち着き始め、その後の食事は美味しく食べられた。
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