180人が本棚に入れています
本棚に追加
花南はアパートに戻ると、大きな溜息をついた。
『なーに、でかい溜息してんのよ?』
部屋の奥から、花南と同じ髪の長さで、同じ顔立ちだが艶っぽさが滲み出ている女性が歩いてきた。
『花南・・・ちょっとね』
『社長と上手くやってくれているんじゃないの?』
花南と呼ばれた女性は意味ありげに言い缶ビールをグイッと飲んだ。
真樹に話さなくてはならないのは、花南の方だった。
社長の秘書をしているのは、“花南”ではないのだ。
一卵性の双子の、花南の妹、恵理南(えりな)だった。
昔から悪ふざけが好きだった花南が、幼い頃からよく入れ替わりしていたのが、大学に入っても続き、果てには就職までも・・・。
28歳になった2人を、両親もどちらが花南で、どちらが恵理南か判らなくなることが多かった。
恵理南は、花南に何故か逆らえなかった。
本能的になのだろうか?
花南は、男と付き合っては別れてを繰り返し、男が居なくなると恵理南のアパートに戻ってくる。
恵理南は、花南の“フリ”をして仕事をしている。
学生時代、2人して秘書資格を取っていたのは幸いしていた。
最初のコメントを投稿しよう!