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“花南”は、秘書室に時間ギリギリに入り、その日のスケジュールをチェックした。
こんな窮屈なスケジュールを良くやっていたわねと、思わず口に漏らした。
『それでも緩くはなっているはずだが?』
目の前に、怪訝な表情で睨んでいる男性が居た。
『おはようございます』
『あぁ、おはよう』
真樹は何かがおかしいと直ぐに分かった。
“彼女”の匂いが違う。
いつもなら、爽やかだかどこか甘い石鹸の匂いを感じさせていた。
それが今日は、艶っぽさを感じさせる。
『石鹸でも変えたか?』
不意に問われて花南は、「いえ、それが何か?」と言った。
そのまま真樹は社長室に入って行った。
その日の会議の資料を集め、ファイリングし社長に目を通して貰ったり、休憩にコーヒーを入れたり、秘書としての能力は、恵理南とは変わらない筈だと花南は思っていた。
事前に、恵理南から重役たちなどの名刺と特徴を事細かに説明され、頭に叩き込んだ。
さすがに、“入れ替わり”をするのは3日程かかった。
花南の醸し出す、艶っぽい雰囲気に男性社員は浮かれ顔だった。
仕事も難なくこなしているつもりだったが、本当に細かい所で、社長にミスを指摘されることはあった。
恵理南に出来て、私に出来ないはずはないのよ!
日に日に、花南は、恵理南の姿を微妙に変えつつ本来の花南の姿が出て来つつあった。
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