歩き出した階段

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恵理南は、アパートで独り何も出来ずに家に籠っていた。 訪れる人は滅多に居ない。 誰も来て欲しくない時に、チャイムが鳴った。 『はい』 玄関を開けると、菜月が居た。 『えっ?』 恵理南は驚いた。 何故、菜月さんが? 『章兄が、今秘書している“花南”さんは、花南さんじゃないって言いだしてね』 もしかして、バレテいる? 『本当の事、章兄に話して貰える?章兄も、話したい事があるのに話せないって』 『ひ、人違い・・・』 『人違いなんかじゃないわよ。あなたが、秘書をしていた“花南”さんでしょ、恵理南さん』 完全にバレテいる。 恵理南はその場に力尽きた様にへたり込むと、今までの限界の糸が切れた様に涙が溢れた。 『こんなにやつれちゃって』 菜月は中に入り、座りこんで泣いている恵理南を抱きしめた。 『章兄も馬鹿じゃないから、あの花南って女には手は出していないよ』 『で、でも・・・』 『話しは、章兄本人から聴いた方がいいから。顔洗って支度して行くよ』 『行くって、何処へ?』 恵理南は、涙を拭いながら、不思議な笑みを浮かべている菜月を見上げた。
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