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式の当日、緊張の顔で強ばっていた。
『そんなに緊張しなくても』
式に招待したが、来てくれるか?不安に思っていた妹の花奈が控え室で言った。
『・・・でも・・・』
『ここまで来て、“入れ替わり”はもう私も言わないから』
今まであれ程“入れ替わって”きたが、これからは、本当に自分の人生を歩むことに不安が蘇った。
花奈が抱き締めてきた。
『か、花奈!?』
『大丈夫!!なんたって、私の自慢の姉なんだから!!』
背中を擦りながら、優しい声で真奈が言った。
『私だって、花奈は大事な妹よ』
『今生の別れじゃないし、変な事言わないの!』
涙を堪えて頷く。
そこに、式のプランナーが来て「そろそろ時間になります」と告げた。
涙を軽く花奈がハンカチで抑え、化粧が崩れていないのを確認すると一緒に部屋を出た。
『じゃあ、私は席に戻るね』
花奈は、笑顔で離れていった。
教会の入り口には、父が立っていた。
今にも泣きそうな状態だった。
音楽がなり、扉が開くと紅い絨毯の上をヴェールを被った花嫁が現れた。
章介は、感嘆の溜息と、嬉しさがこみ上げてきた。
彼女が抱えていたモノが、完全ではないが自分のナカに溶け込み“自分”というモノを取り戻した事。
父のオフィスに行ったあの日の出逢いから、恵理南を気にかけ、会社の面接に来て採用された後から・・・自分の秘書になって、彼女にしていた事が彼女を嫉妬させるためだったと自覚するまで。
章介自身も、時間がかかった。
今度は、手放さない。
目の前に来た花嫁に、誓いの言葉をし、指輪の交換、誓いのキスをした。
『恵理南、君を愛している』
『私もです。章介さん』
ライスシャワーの中、再びキスを交わす。
甘く苦いチョコレートの味がした。
『今夜は寝かせない』
彼女の耳元で、甘く囁いた。
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