1.姿無き犯人

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「これで今日の仕事はおしまいだ」 終電の清掃を終え制帽をぬいだ赤石は、 額の汗をタオルでぬぐった。 5月からは、 責任者自ら清掃に励むと決めていた。 ロッカーの扉を開き、 ほうきを架けた。 「一息つこう」 その時、 ほうきの先に隠れていた小さなメモ用紙が ヒラリと足元に舞い落ちた。 「何だろう?」 拾い上げる。 小さな文字で書かれてあった。 「誰か助けて!」 顔をしかめる。 「痴漢被害?」 今年は減少傾向にあった電車内の痴漢事件だが、 5月になってまた増えてきたのだろうか。 しかし、 今週の保安連絡会でもそのような報告は受けてない。 「もしかすると、 これは何か別の事件かもしれない。 一応、 このメモは交番に届けよう」 *****
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