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「注文は? 早く食べて帰ってください、できれば今すぐ帰ってください」
掛川さんは天津飯と餃子、僕はエビチリとライスセットを注文した。
恵子ちゃんが厨房に引っ込んだところで、僕は掛川さんに恵子ちゃんとの関係を聞いてみた。
恵子ちゃんは大学時代のサークルの後輩。サークルメンバーは掛川さんの下の名前「優一」を略して「ゆい」と呼んでいたらしい。そして、僕からすれば非常に仲が良いように見えるのだが、本人たちからしてみれば、
「えっ? 即死しろって思ってんだけど」
「は? ゆいさんの遺言早く聞きたい」
と、そのような評価に不服のようだ。
僕たちの目の前に置かれたのは、エビチリが二皿。
「何だこれ、頼んでねぇんだけど。餃子は?」
「ゆいさんの分を別に作るのめんどくさかったんで、二人でエビチリ食べてくれません? それに私エビチリ好きなんですよ。エビが、えーびっちり! って感じ」
「つまんね。エビチリおばさんかよ」
文句を言いながらも、掛川さんは勢いよくエビチリを口に放り込んでいく。恵子ちゃんはなぜか「ルージュの伝言」を口ずさみながら、ペンギンズのポスターを壁に貼り始めた。ちなみに、その横には本郷奏多カレンダーが掛けてある。
店を出る時、恵子ちゃんは掛川さんに塩を撒いていた。
「次来るときは豆乳持ってくるわ」
「散々飲んだけど全然大きくなりませんでしたよ! てかもう来んな」
「飲んだのかよ。まぁ確かに豆みたいな乳してんな」
「あ?」
こうして店先で三十分ほど時間を使い、ようやくお開きになった。
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